【レポート】ソニー銀行のクラウドジャーニー ~AWS の利用開始から勘定系移行への道のり~ #AWSSummit
どうも、もこ@札幌オフィスです。
今年はAWS Summit Onlineという事で、2020/9/8〜9/9の間のライブセッションと、9/30まで視聴可能なAWS認定セッション、お客様事例セッション、セルフペースハンズオン、Partner Discovery Session (パートナーセッション) などなど、場所を選ばずにオンラインで、好きな時に好きなだけ学べるような環境になっています。
本記事はオンデマンドセッション「ソニー銀行のクラウドジャーニー ~AWS の利用開始から勘定系移行への道のり~」のセッションレポートとなります。
セッション概要
ソニー銀行株式会社 執行役員 システム企画部 システム開発部 システム管理部担当 福嶋 達也 氏
ソニー銀行は、日本の金融機関の中でいち早く AWS の活用を開始した 1 社であり、現時点で財務会計システム(総勘定元帳)を含む大半のシステムがクラウド上で稼働しています。また、今後は、2021 年に開設される大阪リージョンも活用し、クラウドネイティブな勘定系システムを AWS 上にて稼働させる計画です。本セッションでは、2013 年の AWS 利用開始から現在に至る、ソニー銀行のクラウド・ジャーニー、勘定系移行の意思決定のポイントやそのアーキテクチャーについてご紹介します。
セッションレポート
Agenda
- ソニー銀行におけるAWSの活用状況
- 勘定系システムのクラウド移行
ソニー銀行におけるAWSの活用状況
- ITコンセプトを考えている
- 基本方針は「低コスト、高品質、短期調達」
- 従来まで
- 調達は自分で作る
- 技術は特定ベンダーのパッケージを利用
- 結果的に密結合に
- 6〜7年前からあるべき姿に基づいてIT部門を運用
- 基本方針は変更なし
- 調達はなんでも自分で作るのでは無く、あるものは使って組み合わせていく
- テクノロジーもオープンな技術を活用、こちらの方が成熟していたり安価だったりサポートが優れていたり
- システム構成についても短期的には密結合のほうが作りやすかったりするが、長期的なコストを意識して疎結合に
- 従来まで
- クラウド導入の目的
- ITコストの最適化
- 柔軟性・俊敏性の向上
- これまでのクラウド活用事例
- 2011年〜国内外のさまざまなサービスについて情報収集・調査を開始
- この段階ではまだまだ成熟していなかったため様子見
- 2013年の段階でAWSが技術的にもセキュリティー面でもコスト的にも優れていると判断
- 2013年12月から社内システム、銀行の周辺系と言われるコア業務では無い所において利用を開始
- システムのライフサイクルは5年、システムのライフサイクルに合わせて順次AWSに移行
- 社内システム、銀行周辺システムについては2019年に移行完了が出来た
- 2017年、勘定系で非常に重要な総勘定元帳をつかさどるシステムをAWS上に載せる決定
- 大阪ローカルリージョンが作られることを受けて決定、2019年に本番稼働開始
- 2019年4月にVDI環境であるAmazon Workspacesを通常の業務端末として全面的に採用
- 2019年、AWSの利用可能範囲を全業務とする反映を決定
- 大阪のフルリージョン化を受けて判断
- 次期勘定システムもAWS上で開発する
- 2020年7月からは銀行業務の端末もAmazon Workspacesに移行をしている
- 2013年から段階的に利用を開始して、現時点で全面的に利用をしている
- 2011年〜国内外のさまざまなサービスについて情報収集・調査を開始
- 現時点では約80%のシステムがAWS上で稼働している
- 銀行業務だと財務会計、融資管理、リスク管理、自動審査システムなどなど・・・
- 現時点ではオンプレミス上にインターネットバンキングや勘定系など、基幹系システムが残っている
- AWSを導入した効果
- 最大でインフラコストが最大60%程削減
- インフラの導入期間も半減
- 導入のポイント・重要成功要因
- オンプレミス環境において最適であったシステム構成がクラウド環境において最適とは限らない
- クラウドはクラウドの最適な方法をとる
- AWSの特徴と機能を理解してクラウドに適したシステム構成・公式を検討する
- 様々な情報が公開されているので、AWSサイトなどを参考にしつつ、クラウドデザインパターンを整理・蓄積していくことが重要
- オンプレミス環境において最適であったシステム構成がクラウド環境において最適とは限らない
導入のポイント コスト面
- クラウドの良いところは"使った分だけ払えば良い、使わなかったら止めれば良い、足りなければ足せば良い"
- 従来のオンプレミスだと買ってしまったら運用するしか無かったが、クラウドの特徴を最大限に生かしていく
- 少なくとも1年に2回稼働しているシステムの処理量の変動、利用時間、業務的な特性の変化を確認してる
- 過剰なリソースの割り当てがあったらサイズを小さくする
- 社内の限られた業務でしか使われていないシステムについては、夜間や休日に使っていなければ業務部門と調整して止める
- リザーブドインスタンスの導入やAutoScalingの検討をしている
- 導入した後も定期的に確認してコストを最適化している
導入のポイント セキュリティー
- 責任共有モデルを理解する
- AWSが責任範囲となる部分についてはSCOレポートやホワイトペーパーで確認
- 利用企業側の責任についてはチェックリストなどに基づいてアセスメント
勘定系システムのクラウド移行
- 2022年度の本番稼働を目指してAWSを用いた次期勘定システムの開発を推進中
- AWSを全面採用(東京リージョン、大阪リージョンを利用)
- IaaSとしてAWSを利用するに留まらず、積極的にAWSの機能・サービスを活用
- サーバーレス、クラウドネイティブなアーキテクチャ
- 銀行の勘定系に留まらず、情報系、外部接続、インターネットバンキング(Web)、オープンAPIも対象
- 2016年から現行システムの課題を調査、次期勘定システムの構想の検討を開始
- 2018年から本格的に検討を開始
- FBaaS(富士通の勘定系システム、現在開発中)の活用
- 2022年の本番稼働を目指して開発を推進中
- 次期勘定系システムのAWSの全面採用
- 2013年から利用しているためノウハウが蓄積されている
- 大阪ローカルリージョンのフルリージョン化をしてくれる
- セキュリティーのアセスメントをしているが特段問題が無い
- AWSの特徴、高い可用性
- ハードウェアレベルで高い耐障害性が実現されている
- システムを止めずにメンテナンスを行う技術が成熟している
- ハードウェアレベルで高い耐障害性が実現されている
- MultiAZ/Multi Regionがあり、万が一特定のシステム、サーバー、データセンターに障害が起きても高い可用性を実現
- 様々なサービスでMultiAZ/Multi Regionの考え方が出ているが、AWSでは2008年からMultiAZを提供している
- 単体レベルでも高い耐障害性があるものと考えているが、さらに極めて高い可用性を実現出来る
- AWSでは積極的な情報開示を行っている
- セキュリティーに関する外部認証を全リージョンを対象に取得、維持しており、SOCレポートも取得可能
- それ以外にもホワイトペーパーやリファレンス、事例集を通じて情報を入手可能
- 利用企業同士のコミュニティで企業同士の知見を交換出来る
- 継続的に新しいサービスが出てきている
- サービスの値下げも継続的に行っている
- サポート体制も非常に高い
- Enterprise Support Planに加入
- 従来のオンプレミスにおけるSIer, ベンダーのサポートに比べても遜色なく、それを凌駕するような非常に高品質でスピーディーで的確なサポートを受けられている
- 2019年8月の東京リージョンの障害児の対応
- オンプレミスでも発生するデーターセンター障害で、クラウド固有の障害では無い
- 決めて障害児の対応、原因、報告がタイムリーで丁寧
- 迅速に暫定対応などが対応がされているが、抜本的な対応、再発防止策についても非常にスピーディーに実施、丁寧に報告をして頂いている
- 従来のオンプレミスでのサポートを凌駕するような非常に高い品質のサポートが受けられる
- 顧客の声を真摯に受け止めてくれる
- 当初から勘定系にAWSを利用する事を想定して様々な要望を出していた
- しっかりと受け止めてくれて、実際に2018年には大阪ローカルリージョンが開設
- さらに、2021年初頭にはフルリージョン化
- 日本特有のことについても耳をかたむけてくれて対応して頂いている
- 次期勘定システムの構築方針
- AWSの機能・サービスを最大限活用した、サーバーレス・クラウドネイティブなアーキテクチャを志向
- 当該志向により、独自開発範囲を極小化
- 独自開発範囲はマイクロサービス化の考え方に従い開発
- ほぼ全てをAWS環境に移行
- オンプレミスのデータセンターに残る物は、外部のネットワークとの接続のみ
- 次期勘定系システムの概要
- ECS/Fargateの活用、API Gatewayを利用してOpenAPIを提供
- データベースはAuroraを採用
- 利用予定のAWSサービス
- CI/CDではCodeシリーズを利用
- 独自で開発しなければいけない部分はコンテナを活用
- 銀行としてどうしても個別に作らないと行けないアプリケーションについてはコンテナ化して疎結合にして開発を進めている
- アプリケーションは富士通のFBaaSを利用
- Amazon Auroraの採用
- 高い可用性、機密性を評価
- PostgreSQL互換のAuroraを利用
- セキュリティー対策
- AWS Shield Advanced/AWS WAFを活用
- Security Hub/GuardDutyを利用
- セキュリティー面についてもAWSが提供するサービスを利用
- 現代はまだ「クラウドファースト」という言葉が主流だが、「クラウドオンリー」と考える
- クラウドであることを前提として、可能な限りクラウドネイティブな形で作る
- どこまでクラウドにするかでは無く、どのようにクラウドを活用するかを考える